煎じパックへのこだわり
薬煎院薬局は、漢方薬、特に「煎じ薬」の専門店として、独自のこだわりを持って、特に技術面で様々な工夫を行っております。
1.煎じることへのこだわり
2.煎じ代行サービスへのこだわり
3.処方研究および技術研究へのこだわり
4.漢方に対する考え方
漢方薬を煎じることへのこだわり
薬煎院薬局は、昔から用いられ、体にやさしく効果が高い生薬を煎じて作る「煎じ薬」にこだわっています。しかしながら、煎じ薬は現代人のライフスタイルには合いにくいという大きな欠点があります。そこで、お客様から時間と手間がかかる煎じ作業を開放しなければ、どんなに良い薬であっても服薬を続けてもらうことが難しいと考えました。
ご自宅でお客様に漢方薬を煎じて頂くという古い考え方ではなく、薬剤師が煎じ作業を一括して代行し、煎じる手間を省くことができれば、より良く漢方薬の効果を実感して頂くことができ、手軽に利用して頂くことができると考えました。このような逆転の発想からスタートしたのが煎じパックの提供であり、当薬局の「煎じ代行サービス(無償)」です。
煎じ代行サービスへのこだわり
薬煎院薬局では、お客様に煎じ薬の力を100%実感して頂くために、お客様からのご依頼を受けて、漢方処方を天然水で煎じ、無菌状態でアルミパックに封入してお渡しするという「煎じ代行サービス」を提供しております。「煎じ代行サービス」はあくまでもお客様に代わって専門家が煎じを行うサービスで、当薬局で漢方薬をお求め頂いたお客様には追加料金なしで無償で提供しております(当薬局では、自分で煎じられても煎じ代行サービスを利用されても値段は同じです)。また「煎じ代行サービス」は、客様のご依頼を受けて漢方薬を煎じてパック詰めするサービスですので作り置きは一切いたしません。
漢方の専門家に煎じをご依頼頂くことにより、最も効率的かつ効果的な煎じを提供可能であり、煎じの手間をお客様から解放することができます。それだけではなく、自煎のような「煎じムラ」が発生することもないため、効果が安定するなどのメリットをお客様に実感して頂けます(煎じパックでは最初の一包から最後の一包まで均一な状態の漢方薬を服薬して頂けます。煎じパックには煎じムラはありません)。
これまで、漢方薬を処方する側は処方だけを行い、煎じをお客様任せにしていました。しかし、最良の医療を求めるという観点からすれば、ベストなやり方と言えるものではありませんでした。
漢方薬を処方した者が、煎じ工程を含め、最後まで責任をもって「フルコントロール」することにより、これまでにないハイクオリティな煎じ達成することができ、お客様にも安全、安心、安定した「これ以上効く漢方薬はない」と言える、最良かつ最高の煎じ薬を提供できると考えております。
処方研究、技術研究へのこだわり
●薬煎院薬局の店長(筆者)は、以前製薬会社の研究者として、抗アレルギー薬や肝臓病に用いる医療用医薬品の創薬研究を行っていました。多くの医学論文を読み、薬の開発に必要な仮説を立て、様々な実験を行って考察を繰り返すという毎日を送っていました。このため、当初は西洋医学を信じられても東洋医学は信じられないという立場でした。21年間務めた製薬会社を退職した後、漢方の道を40年間歩んできた恩師から漢方を学んで店頭に立ちましたが、実際に漢方薬の効果を目にするうちに、漢方薬には西洋薬にはない「優れた効き目」や「体質改善効果」があることに驚きを隠せませんでした。
●筆者には、漢方薬になぜ「優れた効き目」や「体質改善効果」があるのか疑問でした。しかし、近年になりその答えの糸口を見つけることができました。
最近、腸内フローラ(腸内細菌叢)という言葉がテレビなどの医学情報番組などで盛んに取り上げられており、皆さんもよくご存じのことと思います。その理由は、腸内フローラが先端医学のトピックスとして2007年頃から医学論文が続々と発表されるようになったためです。遺伝子解析技術の飛躍的な発展とその応用により、それまで困難を伴っていた腸内細菌の数や種類の特定と分析が格段に精度良く行えるようになり、腸内細菌と様々な疾患の関係が今まで以上に良く分かるようになりました。
腸内フローラとは、善玉菌と悪玉菌などのヒトの腸内に住む細菌の均衡状態のことを言いますが、その中でも善玉菌と言われる腸内細菌の数を増やすと、ガン、アレルギー、自己免疫疾患、糖尿病、高血圧、肥満、老化、更年期障害、うつ病などの様々な病気が改善されるという医学論文が数多く提出されています。
●この中で、腸内フローラを考える際に特に重要なポイントがあります。それは、基本的にヒトの腸内に住む善玉菌の多くが、植物繊維を餌にするという点です(特に日本人にはこのことが重要です)。つまり、善玉菌は植物繊維がなけれはヒトの腸の中で増えることができません。
●漢方薬は植物の草根木皮を原料とし、煎じ薬はこれらの食物原料(生薬)をグツグツ煎じて作ります。その中には有効成分の他に、善玉菌を増やす善玉菌の餌となり得る植物繊維(水溶性及び不溶性の繊維質)が豊富に含まれています。つまり煎じ薬には有効成分の他に腸内フローラを改善する植物繊維がたくさん溶け込んでいます。古来より、漢方薬には体質改善を促す効果があると言われていますが、漢方薬により体質を変えるということは、漢方薬を飲み続けることにより腸内フローラの善玉菌を増やすことと言っても過言ではありません。漢方薬は治療の他に、未病(病気の一歩手前の状態)の際にも用いますが、善玉菌を増やすことによって、病気を未然に予防できる理由が植物繊維との関係により説明可能です。
●先述の通り、製造工程での含有成分の消失のため、エキス剤が煎じ薬の効力に及びませんが、同様に、薬の中に含まれる植物繊維量にもエキス剤は煎じ薬に及びません。それには理由があります。最大の理由は、エキス剤では、植物繊維の存在が製剤時に邪魔になるため、初めから生薬量を減らして作らざるを得ない場合があるからです。
●エキス剤を作るとき、製薬工場で生薬を煎じた後、その搾り汁から水分を除去して作ります。しかし、生薬に含まれる植物繊維が多いほど、エキス剤を作る際に手間とコストが必要となります(植物繊維は吸湿性が高いため、植物繊維が多いほど水分除去が難しく時間と手間がかかるため余計なコストが生じます)。一方、エキス剤の中に植物繊維量が多くなるほど、漢方薬を服用する患者さんにとってもデメリットが生じます。それは薬のカサが増えることです(1回あたりの服薬量が多くなること)です。場合によっては、1回分あたり10gのエキス剤を服用(錠剤なら20錠近くを服用)することになりかねません。しかしこれは実用的ではなく、口からエキス剤を吹き出したり、誤嚥(粉が誤って肺に入ること。肺炎などの原因となります)を起こす危険性があります。そのため、植物繊維が多くなる処方では初めから生薬を減らして作られるため、植物繊維が少ないばかりか、効き目も悪くなります。無論すべての処方において生薬量を減らしてエキス剤が作られる訳ではありませんが、工場で煎じ薬を作る際に、生薬を搾ることなく上澄みしか用いなようにするなど、植物繊維を減らす工夫している製薬会社もあります。
●むかしながらの煎じ薬では、使う生薬量は100%であり、煎じた後で水分を除去する工程もないので、生薬の持つ有効成分および植物繊維を損なうことなく体に取り入れることができます。また液体であるがゆえに吸収率も良く、安定剤や賦形剤などの添加物を一切含まないので、それらによる薬疹などが起きる可能性もありません。
●店長が、以前製薬会社ので抗アレルギー薬や肝臓病の創薬研究を行っていた関係上、当薬局はどちらか言えばアレルギーや免疫疾患の治療が得意です。今までにもいろいろな症状に合わせて処方研究に取り組んできました。
例えば、当薬局でアトピー性皮膚炎(クームス分類I型、アレルゲン:ハウスダスト)を治療する場合、服薬期間はほぼ1年半から2年です。この期間内に症状の重篤度にかかわらずほとんどの方が完治され、漢方薬の服薬をやめて5年から10年経過しても再発される方はおられません。またアトピー性皮膚炎の治療と同時並行的に花粉症(スギ、ヒノキ)なども治まります。エキス剤ではこれほど早く確実に治療することは難しいのではないでしょうか。
漢方に関する当店の考え方
日本の漢方は5世紀頃に中国から伝わって発展し、17世紀頃に体系化されて現在に至っています。「漢方」という名称は、長崎の出島を介して伝わったオランダ医学を「蘭方(らんぽう)」として区別したことに由来します。一方、漢方「傷寒論」と「金匱要略」などのいくつかの代表的な古典があります。これらの古典は、病気をよく観察した上で、どの病気にはどの処方が効くという臨床における経験則(事実)を体系化したものです。一方、現代の西洋医学は、病気を観察することに加え、なぜこの薬がこの病気に効くのかという科学的根拠に基づいた証拠(エビデンス)を重視します。逆に言えばこの病気に効くという証拠がなければ、治療はできません。
東洋医学と西洋医学では病気に対するアプローチ方法が違います。
1+1=2のとき、1+2=?と問われれば、皆さんすぐに3と答えられると思います。このような数学的な答えは、もともと「大前提となるルール(ここでは足し算の方法)」から導かれるものですが、このような「大前提となるルール」から答えを予想する方法を演繹法的推論(えんえきほうてきすいろん)といいます。これに対し、病気に対する治療法の多くは医者や薬剤師の投薬経験や治療経験をもとに体系化されています。例えば、「風邪の引き始めのような、悪寒がして体がだるく感じられ、節々が痛むようなときは葛根湯がよい」などです。足し算のように、元々「大前提のルール」があるのではなく、多くの経験から処方や治療法がみちびき出され、「このような症状には葛根湯が良い」と選ぶような方法を帰納法的推論(きのうほうてきすいろん)と言います。
古来からの漢方処方は、数多くの治療経験から導き出されたもので、帰納的に導き出されたものです。これに対して西洋医学の考え方も同じ帰納的な考え方をしますが、先述の通り、西洋医学では何よりも「証拠」を重要視します。つまり単なる観察ではなく、なぜそうなるのかという理由(証拠)が求められます。例えば「特定のたんぱく質の働きだけを阻害すれば、病気の原因であるがん細胞は死滅するはずだ」と考えるような場合、特定のたんぱく質の存在とその役割の解明が必須となります。
薬煎院薬局としては、どちらの考え方を否定することもしません。そのようなことをするより、それぞれの特性を生かすことで、より良い治療が行えると考えるからです。お客様の病気を治すためには、いたずらに古い方法に固守するのではなく、新しい技術や手法を積極的に取り入れ、より良い治療に役立てるというスタンスが薬煎院薬局の考え方です。古来からある煎じ薬に新しいパッキングという技術組み合わせを用いることにより、利便性に優れ良く効くというこれまでにない漢方薬のあるべき姿を「煎じパック」としてお客様に提供させて頂きます。
煎じ技術へのこだわり
薬煎院薬局は、漢方の中でも特に「煎じ薬」にこだわっていることは前述のとおりですが、その思いをお店の名前にも込めています。お店の名前は「漢方薬を煎じる特別な場所」という意味を込め、薬煎院(やくせんいん)としました。またお店の名前に恥じない様に、漢方薬を煎じるために必要な技術についても特にこだわっています。当薬局では5台の煎じ機を用い、処方に合わせて煎じ機を使い分けることができるようにしております。
成分が壊れやすいものや抽出効率が良い場合は「常圧式」漢方煎じ機を用いて煎じを行います。
成分が抽出しにくいものや抽出効率が悪い生薬を含む場合は「高圧式」漢方煎じ機を用います。
生薬保存技術へのこだわり
薬煎院薬局では生薬の保管方法にも特別の配慮を行っています。
古来より、漢方を扱う医院や薬局では「百味箪笥(ひゃくみだんす)」という、様々な種類の生薬を引き出しのあるタンスに入れて保管し、利用してきました。しかし、薬煎院薬局ではこの「百味箪笥」を使用しておりません。その理由は、どんなに高級な百味箪笥であっても虫の侵入や湿気の侵入を完全にシャットアウトすることができないからです。
生薬は長期保存を可能にするため草根木皮を乾燥させたものが多いのですが、それゆえに虫が湧いたり、湿気を吸ってカビが生えるというリスクを負っています。煎じ薬を扱う漢方薬局のプライドとしては、できれば昔から用いられている「百味箪笥」を活用したいところですが、薬煎院薬局では特注容器を用いて保管を行い、虫の侵入や湿気の侵入を完全にシャットアウトするとともに、保管容器の中には脱酸素剤を加えて酸化による生薬の劣化を最小限に食い止めるなどのきめ細かな工夫を行っております。さらに、各生薬はバーコードによる管理を行っております。
このように薬煎院薬局では、漢方という古来からの医薬知識に、最新の科学知識を応用することにより、店名に恥じない、より優れた煎じ薬の調製を目指したいと考えております。